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オトナな女子たちのTTT(第1話)

私の家は母親しかいない片親の家庭でした。

物心ついたときからそうだったので、私はこれが普通だと思っていましたし、両親が揃っているヒトの家が羨ましいと思ったことは皆無です。

ただ、小学校のコミュニティ形成で、影響がなかったというわけではありません。
自由に使えるお金を筆頭に、趣味や嗜好などの影響でしょうか。よく付き合うのは、似たような家庭環境や生活レベルの人が中心となっていきました。

私が特に親しくしていたのが、サヨとカナコの2人でした。
カナコは私と同じで片親の家庭です。しかし、私とは違って、お父さんと二人暮らしというお家でした。

サヨは両親が揃ってるお家です。身なりも良く、とても美人でおしとやかな女の子でした。
やや引っ込み思案なところがあり、あまり自分の主張をするタイプではありません。どちらかというと、私たちのグループの抑制役でした。

サヨは性格も生活レベルも違っていましたが、私の隣の席です。カナコが休み時間の度に私の席にやってくるので、隣の席のサヨとも自然に話すようになり、お昼のグループに加わり、親友へとなっていったわけです。

これ以降、私たちは何かと一緒につるむことや班を組むことが増え、小学校1年から6年まで同じ仲良しグループでした。そんなある日のことです。

「リカ、母さんね、好きな人ができたの」
唐突に母がそう言いました。
「仕事で知り合ったんだけどね」

母は夜の仕事をしていてオトコができるのは、これまでも何度かあったことです。その度に家に連れてきたり、遊びに連れて行ってくれたりしました。

しかし、こうして改まって紹介されるのは初めてのことです。そもそも母と真面目な話をしたことがなかったので、私はとても居心地が悪くなっていました。

「なんで今更言うんだって顔してるね」
「そんなことない……けど、なんて言ったらいいか」

率直な気持ちでした。そもそも私に発言権があるのか、嫌だといえばどうなるのか、暮らしにくくなるのに嘘でも喜ぶべきなのかとか、いろいろ考えてしまい何も言えません。

私はこのときハッキリ思いましたが、どこかで「自分が母の人生を邪魔してるんではないだろうか」と思っていたのです。
そのことが後ろめたさに繋がり、母への濁った対応と言葉になっていたのかもしれません。

しばらくして、その男性がうちに訪れました。
驚いたのは、予想以上に身なりの良い爽やかな男性だったことです。

整髪された髪からはイイ匂いがします。それが整髪料によるものなのか、それともこの男性が発する特有の匂いなのかがわからなかったので、とても印象深かったのです。

白いカットソーの上からグレーのジャケットとお揃いのスラックス。私の二倍くらいあろうかという身長。

アニメや漫画の世界では知っていましたが、存在を目の当たりにしたのは初めてのことです。
これがイケメンか。

私は小さなその全身で、足の先から髪の先までそう思いました。
そして再びギョッとする出来事が起こります。

スラッと長い男性の足に、隠れて覗いているような小さな物体がいたのです。
私よりも小柄なその物体は、やや癖っ毛の金髪、ジッと見つめてしまいそうな青い瞳、豆腐と良い勝負ができそうな白い肌、控えめな唇。

私は思いましたね。
これが妖精か。

背中から羽こそ生えていませんが、黄色と藍色のストライプシャツの上からオーバーオールを着ていました。

その男性のことといい、妖精のような物体といい、メルヘンの世界に迷い込んだのではないかと思ってしまうほど、現実離れした二人組でした

「ビックリさせたかな? この子のお母さんがフィンランド人でね」
男性が何かを言っていますが関係ありません。目の前に妖精がいるのですから。

いや、よく考えればこのイケメンも架空の生き物でした。そう。ペガサスとかドラゴンとか、そんなレベルです。

はぁぁ、と思って妖精を眺めていると、イケメンの足から出てきてトコトコ歩いてきました。
こんなオモチャが発売されれば、きっとベストセラーだろうなと私が思っていると、

「んっ!」
妖精がそう言いながら(?)、何かを握った手を差し出して来ました。

全長がなんとも長い、パッケージに隠れていないむき出しの部分は、透明感のあるグリーン。小さな手がちゃんと握れるような太さの、棒のようなものです。先端が妖精の唾液で塗れてテカっています。

それは飴でした。千歳飴のようなやつです。しかしパッケージは何やら読めない英語のようなもので、明らかに日本製のものではありません。

「ううん、いい」
飴についた唾液を見ながら、ぶるぶると首を振って断ります。すると彼は残念そうに、再び飴をくわえ始めました。

それにしても動く妖精さんは初めて見ます。いや、止まっているのも現実では見たことがないんですけど。

実在するんだあ。
と思いながらシゲシゲ眺めていると、妖精さんもじっと見つめてきます。

妖精さんも人間が珍しいんでしょうか。
結局その日の記憶は、イケメン長身男性と妖精さんのことだけです。何かいろいろ話をしていたようですが、私に会話をした記憶は残っていませんでした。

そういえば、なんていう名前だったんだろう?
それが私と妖精さんの、ファーストコンタクトでした。

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