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年齢と恋愛の方程式(改題)

小学校5年の頃、私には同い年の彼氏がいました。

私が好きになったのは小学校3年のときです。何かと彼のそばに行って、すこしでも長く彼の近くにいられるようにしていました。

小学校4年の頃、彼も私のことが好きだということがわかりました。それからしばらくの間は、お互いに好き同士のクラスメイトという関係を築いていました。

そして小学校5年のとき、私たちは付き合うようになりました。当時、周囲に小学生で彼氏彼女がいる人は少数派でしたが、まったくいないわけではありません。

それだけに彼氏や彼女がいることが、周囲に対して大きなアドバンテージやステータスとなっていた側面もあります。

しかし、私たちはそういった軽いノリで付き合っていたわけではありません。ちゃんとお互いのことを好きでいましたし、大事にしていました。

小学生だからという背徳感やトラブルに対する恐怖もあって、簡単に手を出さなかったのかもしれません。私はそれを、「彼が真面目に考えてくれている」という風に捉えていました。

そういった考えに後押しされるように、彼への想いは急激に成長していきます。「周囲のように軽い付き合いじゃない」という気持ちが、ますます恋心を増長させてしまい、留まることを知らなかったのです。

彼や私の家で抱き合うことが、だんだん増えてきます。日に日に大胆になっていく私に、彼は少々戸惑っていました。それでもちゃんと受け止めてくれているように感じていたのです。

あまりに互いの家に行き来すると怪しまれるので、秘密の場所で過ごすこともあります。
そこは取り壊される寸前の廃墟のような、閉鎖された団地でした。

入り口は封鎖されていましたが、乗り越えることは容易です。当然、部屋の中まで入ることはできません。せいぜい階段や廊下にいるぐらいです。

それでも世間から目の届かない場所にあるそこは、周囲の目を気にすることなく愛し合える場所として、私たちにとっては貴重だったのです。

彼はその場所にお菓子を持ってきました。高そうな四角い缶に入ったクッキーです。

私たちはその場所を「秘密基地」という風に考えていましたので、そのクッキーは自然に非常食という位置づけになりました。中身がなくなったあとも、家から持ってきたお菓子をその缶の中に入れるのが習慣になっていました。

そうしたある日、私たちの関係に終止符を打つような事件が起きたのです。

いつもどおり、私の家で彼と愛を確かめ合っていました。その頃にはすこし慣れてきていたので、どこを触るとどう反応するかが手に取るようにわかりました。

気持ちだけではなく、身体まで感度が上昇していて、気持ち良い声が出ることもあります。階下には母がいましたので、声を抑えるように工夫しました。1階から昇ってくる階段の足音には、常に注意しているつもりでした。

しかし、互いへの愛撫が手慣れてきたことが、自分を増長させて油断につながっていたのかもしれません。自分たちが子供だと言うことを、すっかり忘れていたのでしょう。ドラマなどでよく見る、恋人たちがせめぎ合うシーンを妄想していたのかもしれません。

私の部屋の扉が、いきなり強めに開かれました。そこに立っていたのではやや眉間にシワを寄せた、怒っている様子のお母さんです。お母さんはその場で怒鳴ったりせず、私たちに対して服を着て下に降りてくるように言いました。

怒気を抑え込んだその物言いが、余計に恐怖を感じさせました。

覆い被さってくる大きな闇のような恐怖に包まれながら、無意識に下着や服を身につけました。ふと彼の方を見ると、今にも泣き出しそうな表情で、不安げに一点を見つめていました。

私は彼の手をしっかりと握ったあと、服を手渡して着衣を手伝います。服を着た後、私たちは手を繋いで階段を降りていきました。足は震えていて、互いに支え合わないと階段から落ちてしまいそうで怖かったのです。

お母さんが待っているリビングの前で手を離して、ふたりで部屋に入っていきます。私たちの関係も、互いに身体を求め合うのも、まだ早いことは十分にわかっていました。

私は当時から、責任を果たす能力がない以上、両親の迷惑になるようなことをしてはいけないという考えを持っていました。しかし、彼への想いや、内から湧き出る欲望に逆らうことができなかったのです。

今思えば、小学生といえど、そのときの「想い」は、大人の抱く「愛」とそう大差がなかったと思います。

もちろん、ノリやステータスで付き合ったりする人も多いので、小学生の恋愛がすべて真面目なものだとは思いません。しかし、私たちは小学生なりにしっかり考えていたということは、胸を張って言えました。

結局、お母さんから言われたことも、そういった一般的な倫理観、道徳観でした。

その夜、お父さんとふたりで話をすることになりましたが、意外にもお父さんは怒っていませんでした。しかし、怒られるよりも辛くなるような、そんなことを言われます。

「自分の価値は自分で決めるんだよ。お父さんたちの、おまえへの価値が、おまえが自分で決めている価値より大きすぎたんだろうね」
と弱々しく語ったのでした。

当時の私には難しい言葉だったのですが、お父さんの期待を大きく裏切ったのだ、ということだけはわかりました。

今になって思えば、両親が手間暇かけて、それこそ人生を投げ打ってつくりあげた「子供」が、自分で自分を安売りしていることに愕然としたのだと思います。

当時は安売りしているといった気持ちはなかったのですが、今では色んな意味でもう少し考えて行動するべきだったと思います。

私はそのとき、この恋をその場で言われるがままに終わらせることは、それこそ期待を裏切ることになるのではないだろうか、と思いました。

その原因となったのは、小学校で遊びのような恋愛をしている周囲の友達です。私たちの恋は、そんな人たちと違って真剣なのだということを、お父さんたちにわかってほしいと思いました。

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